日本企業で進むIFRS対応。ディスクロージャーの専門家に求められる役割とは?

日本企業の間で、国際会計基準 IFRS(International Financial Reporting Standards)への対応が広がっています。
日本では、IFRSは強制ではなく「任意適用」という形で導入が進んできました。希望する企業が自らの判断で採用できる仕組みで、2014年に閣議決定された成長戦略でも任意適用企業の拡大が掲げられるなど、国を挙げて後押しされてきた経緯があります。日本取引所グループ(JPX)の公表によれば、2026年4月末時点でIFRSを適用済みの会社は295社、適用を決定している会社は18社、合わせて313社にのぼります。グローバル投資家への情報開示や海外展開の拡大に伴い、IFRSでの財務報告を検討・導入する企業は年々増えています。
しかし、IFRS導入は単に会計基準を変えるだけではありません。財務報告の作り方、開示資料の構成、投資家への説明方法など、企業のディスクロージャー全体に大きな影響を与えます。世界共通のものさしで自社を語るということは、開示の考え方そのものを見直すことでもあるのです。そして、その中で重要になるのが、企業の開示を支える専門家の存在です。
企業がIFRSを選ぶ理由はさまざまです。海外に子会社を多く持つ企業であれば、グループ全体を同じ基準でそろえることで連結決算が効率化し、財務情報の比較もしやすくなります。海外の投資家から資金を調達したい企業にとっては、世界中の投資家が見慣れた基準で開示することが、投資判断のしやすさにつながります。国境を越えたM&Aや事業展開を進めるうえでも、共通言語としてのIFRSは有効です。こうした事情を背景に、IFRSは大企業を中心に着実に広がってきました。
IFRS対応で企業が直面する課題

IFRSを導入する企業の多くが、次のような課題に直面します。会計の知識がある人ほど、その難しさと奥行きが見えてくる領域でもあります。
01. 会計基準の違いへの対応
日本基準(J-GAAP)とIFRSでは、資産評価などの考え方に異なる部分があります。代表的な論点が、のれんの会計処理です。日本基準では一定期間にわたって定期的に償却するのに対し、IFRSでは原則として償却せず、毎期の減損テストによって価値が損なわれていないかを評価します。同じ企業活動でも、どの基準で測るかによって損益や資産の見え方が変わってくるわけです。こうした違いを正しく理解し、自社の取引にどう当てはめるかを一つひとつ判断していく作業が求められます。
02. 開示資料の大幅な変更
IFRSでは、有価証券報告書やアニュアルレポート、決算説明資料などの開示内容が、より詳細かつ国際的な視点で求められます。一般に、IFRSに基づく開示書類は日本基準と比べて注記などのボリュームが増える傾向があり、その分だけ作成やチェックにかかる負荷も高まります。単に項目を増やすのではなく、海外の投資家が読んでも理解できる構成や説明へと、資料全体を組み替えていく視点が必要になります。
03. 投資家への説明強化
IFRSは「原則主義」と呼ばれます。細かなルールを一律に当てはめるのではなく、原則に照らして企業自身がどう判断したのかを示すことが重視される仕組みです。裏を返せば、なぜその会計処理を選んだのかを、企業が自らの言葉で説明できなければなりません。判断の自由度が高いからこそ、その根拠を整理し、投資家に納得感を持って伝える説明力が、これまで以上に問われることになります。
ディスクロージャーの専門性としてのつよみ
IFRS対応では、単なる会計処理だけでなく、開示資料の設計、伝えたい内容を筋道立てて示すストーリーの構築、国際投資家への情報発信など、企業の情報開示全体を設計する力が必要になります。会計と開示の両方を理解したうえで、企業の実態をどう表現するかを考える点に、ディスクロージャーの専門性が発揮されます。
たとえば同じ財務数値でも、どの順序で、どの注記とともに示すかによって、読み手の理解は変わります。原則主義のもとでは「正解の様式」が一つに決まっているわけではないため、自社の事業をもっとも適切に伝える見せ方を組み立てる余地が大きく、ここに専門家の判断が求められます。制度を守るだけの作業ではなく、企業の姿を国際的な投資家に正しく届けるための設計という側面を持つのが、IFRS時代のディスクロージャーといえます。
私たちディスクロージャー・プロは、こうした企業のIFRS対応を、開示の専門家として支援しています。
IFRS対応ができると、どんなメリットがあるのか
IFRSに対応できることは、会計・経理に携わる人にとって一つの強みになります。
ここで押さえておきたいのは、IFRS対応に特別な資格が必須というわけではない、という点です。公認会計士などの資格があれば理解の助けになりますが、それ以上に大切なのは「学びたい」「やってみたい」という意欲と、経験を通じて知識を積み上げていく姿勢です。原則主義のもとで自ら考え、判断の根拠を組み立てていく仕事は、決められた手順をこなすだけでは身につかない力を養ってくれます。
実際、IFRSを扱える会計人材は採用市場でも評価されやすく、通常の経理・会計の経験に加えてIFRSの実務経験を持つことは、キャリアの幅を広げることにつながります。ディスクロージャー・プロでは、IFRSに興味があって挑戦したい人や、すでにIFRSの経験を持つ人が、その専門性を発揮できる環境があります。
私たちの仕事

私たちの仕事は、企業の情報開示を支えることです。IFRS導入企業の開示資料作成をはじめ、財務情報の整理・可視化、投資家向け資料の制作、最新制度への対応支援など、企業が果たすべき「伝える責任」を、開示の専門家として下支えしています。制度が複雑で負荷の大きい場面ほど、専門家が並走する意味は大きくなります。
ディスクロージャー・プロは、開示書類作成の最大手であるプロネクサスグループの一員として、多くの上場企業の開示実務を支えてきました。日本基準とIFRSの双方に対応できる体制を持ち、属人化しやすい開示業務を仕組みとして整え、チームで品質を担保しています。基準が変わっても、最新の情報をいち早く取り入れて対応できることは、開示を専門に手がける私たちならではの強みです。
まとめ
IFRS対応は、会計基準を切り替えるだけの作業ではありません。開示資料の作り方や投資家への伝え方までを含めて、企業のディスクロージャー全体に関わるテーマです。日本ではIFRSはあくまで任意適用ですが、グローバル化の流れのなかで採用する企業は着実に増えており、2026年4月末時点では適用済みと適用決定を合わせて313社に達しています。
日本基準とは資産評価などの考え方に異なる部分があり、のれんの扱いのように損益の見え方そのものが変わる論点もあります。開示すべき情報は詳細になり、原則主義のもとでは企業自身の判断力と説明力が問われます。だからこそ、会計と開示の両面を理解し、企業の実態を国際的な投資家に向けて分かりやすく表現できる専門家の役割が重要になります。
ディスクロージャー・プロは、企業の「伝える責任」に寄り添いながら、IFRS対応をこれからも支えていきます。
日本取引所グループ(JPX)|「IFRS適用済・適用決定会社一覧」(2026年4月末現在、2026年5月1日更新)






