サステナビリティ開示基準(SSBJ基準)とは?最新動向と企業対応を解説

近年、「サステナビリティ開示基準(SSBJ基準)」という言葉を目にする機会が増えています。しかし、「SSBJ基準とは何か」「なぜ注目されているのか」「自社の開示実務にどのような影響があるのか」など、疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
サステナビリティ開示は、気候変動や人的資本、ガバナンスなどの非財務情報を企業価値の評価に活用するための重要な取り組みです。近年は投資家の関心も高まっており、企業には財務情報とあわせて適切な情報開示が求められるようになっています。
本記事では、SSBJ基準の概要やISSB基準との関係、最新の制度動向について分かりやすく解説します。
サステナビリティ開示基準(SSBJ基準)とは?

サステナビリティ開示基準(SSBJ基準)は、日本企業がサステナビリティ情報(気候変動や人的資本などの非財務情報)を開示する際の基準となるものです。
SSBJの役割や基準策定の背景について解説します。
SSBJとは
SSBJとは、サステナビリティ基準委員会(Sustainability Standards Board of Japan)のことです。2022年に公益財団法人財務会計基準機構(FASF)内に設立され、日本におけるサステナビリティ開示基準の開発を担っています。
近年は、財務情報に加えて気候変動や人的資本などの非財務情報への関心が高まっています。こうした流れを受け、SSBJは2025年に日本初のサステナビリティ開示基準(SSBJ基準)を公表しました。
企業がサステナビリティ情報を適切に開示するための共通ルールとして、今後の開示実務に大きな影響を与えると考えられています。
ISSB基準との関係
SSBJ基準は、日本独自の基準でありながら、国際的なサステナビリティ開示基準であるISSB基準との整合性を重視して開発されています。
ISSBはIFRS財団のもとで設立された国際的な基準設定機関であり、「IFRS S1」「IFRS S2」を公表しています。
SSBJ基準もこれらを参考に策定されており、日本企業が国内外の投資家に対して比較可能な情報を提供できるよう配慮されています。
サステナビリティ開示が求められる理由
サステナビリティ開示が求められる背景には、投資家の情報ニーズの変化があります。
近年は売上や利益といった財務情報だけでなく、企業の持続的な成長につながる非財務情報も重視されるようになった為です。
投資家は次のような情報に注目しています。
- 気候変動への対応状況
- 人材育成や人的資本への投資
- コーポレートガバナンスの体制
- 事業に関するリスクや機会
こうした情報は、企業の将来性やリスクを判断するうえで重要な材料です。
そのため企業には、財務情報だけでなく、将来の成長やリスクに関わる情報も分かりやすく開示することが求められています。
サステナビリティ開示は、企業と投資家の対話を支える重要なコミュニケーション手段として位置付けられているのです。
SSBJ基準はどのような内容で構成されているのか?
SSBJ基準は、企業がサステナビリティ情報を開示する際のルールを定めた基準です。2025年3月に公表された基準は、次の3つで構成されています。
- 適用基準
- 一般開示基準
- 気候関連開示基準
それぞれの概要を解説します。
適用基準
適用基準は、SSBJ基準全体の土台となる基準です。
企業がどのような考え方でサステナビリティ情報を開示するのか、基本的なルールが定められています。
例えば、どの情報を開示対象とするのか、どのような基準で重要性を判断するのかといった考え方が示されています。
また、サステナビリティ情報と財務情報のつながりについても定められており、一貫性のある情報開示が求められているのです。
一般開示基準
一般開示基準は、企業のサステナビリティに関する取り組みや課題を開示するための基準です。ISSBが公表した「IFRS S1」と整合性を図りながら策定されています。
主な開示項目は次の4つです。
- ガバナンス
- 戦略
- リスク管理
- 指標および目標
これらの情報を通じて、投資家は企業がサステナビリティ課題をどのように経営へ反映しているのかを把握できるようになります。
気候関連開示基準
気候関連開示基準は、気候変動に関するリスクや機会を開示するための基準です。ISSBが公表した「IFRS S2」を基礎として策定されています。
企業には、気候変動が事業へ与える影響や温室効果ガス排出量、削減目標などの情報開示が求められます。
主な開示項目は次のとおりです。
- 気候関連リスクと機会
- Scope1・Scope2・Scope3排出量
- 温室効果ガス削減目標
- 気候変動への対応方針
気候変動への対応は企業価値にも影響を与えるため、投資家にとって重要な判断材料の一つとなっています。
サステナビリティ開示義務化の最新動向

サステナビリティ開示を取り巻く環境は大きく変化しています。近年は投資家が非財務情報を重視するようになり、日本でもSSBJ基準の適用に向けた制度整備が進められています。
制度改正の内容や有価証券報告書との関係、今後の適用スケジュールについて解説します。
2026年の制度改正で何が変わったのか?
2026年の制度改正により、SSBJ基準に基づくサステナビリティ開示の制度化が進みました。
これまでサステナビリティ情報は、統合報告書やサステナビリティレポートなどで任意に開示されることが一般的でした。
しかし今後は、投資家が企業価値を判断するための重要な情報として、より比較可能で信頼性の高い開示が求められるようになります。
また、サステナビリティ情報に対する保証制度の導入も検討されており、企業には開示内容の正確性や透明性を高める対応が求められています。
サステナビリティ開示と有価証券報告書の関係
サステナビリティ開示は、有価証券報告書とも深く関わっています。有価証券報告書は、投資家に対して企業情報を開示するための重要な法定開示書類です。
近年は「サステナビリティに関する考え方及び取組」の開示も求められており、財務情報だけでなく非財務情報も投資判断に活用されるようになっています。
今後、SSBJ基準の適用により、サステナビリティ情報は有価証券報告書における重要な開示項目の一つとして、さらに存在感を高めていくでしょう。
SSBJ基準の適用時期とスケジュール
SSBJ基準は、プライム市場上場企業を対象として段階的に適用が進められる方針です。まずは時価総額の大きい企業から適用し、その後対象企業を拡大していくことが検討されています。
現時点で示されているスケジュールは次のとおりです。
| 時期 | 対象企業 |
| 2027年3月期 | 時価総額3兆円以上 |
| 2028年3月期 | 時価総額1兆円以上3兆円未満 |
| 2029年3月期 | 時価総額5000億円以上1兆円未満 |
| 未定 | 時価総額5000億円未満のプライム市場上場企業 |
サステナビリティ開示への対応には、情報収集の仕組みづくりや社内体制の整備が欠かせません。制度の動向を把握しながら、早い段階から準備を進めることが重要です。
サステナビリティ開示の実務では何が求められるのか?
SSBJ基準への対応は、開示資料を作成するだけではありません。サステナビリティ情報を収集・管理し、その内容を投資家へ分かりやすく伝えることが重要です。
サステナビリティ開示を進めるうえで、企業に求められる実務対応について解説します。
開示体制の整備
サステナビリティ開示では、社内の連携体制を整えることが欠かせません。
従来の開示業務は経理部門が中心でしたが、サステナビリティ情報には気候変動や人的資本、ガバナンスなど幅広いテーマが含まれます。そのため、複数の部門が協力しながら情報を整理する必要があります。
主な関係部門は次のとおりです。
- 経理
- IR
- 経営企画
- サステナビリティ推進部門
- 人事
サステナビリティ開示は、一部門だけで完結する業務ではありません。各部門が連携しながら、情報を適切に集約できる体制づくりが重要になります。
非財務情報の収集と管理
サステナビリティ開示では、非財務情報を継続的に収集・管理する仕組みも必要です。
企業には次のような情報の把握が求められます。
- 温室効果ガス排出量
- 人材育成に関する指標
- ダイバーシティに関する情報
- サプライチェーン関連情報
こうした情報は、財務情報のように管理手法が確立されていない場合も少なくありません。そのため、必要なデータを正確に収集し、継続的に管理できる仕組みを整備することが重要です。
財務情報との整合性確保
サステナビリティ開示では、財務情報とのつながりを意識することも重要です。
例えば、気候変動への対応方針や人的資本への投資について説明していても、それが事業戦略や将来の成長とどのように結び付くのかが分からなければ、投資家は企業価値への影響を判断しにくくなります。
そのため企業には、次のような情報を関連付けて説明することが求められています。
- 経営戦略
- 財務計画
- サステナビリティ戦略
財務情報と非財務情報を一体的に開示することで、企業の将来性や成長戦略をより分かりやすく伝えることができます。
ディスクロージャー・プロが大切にしている視点

開示実務では、単に情報をまとめるだけではなく、その内容が投資家に正しく伝わるものになっているかを確認する視点が欠かせません。
ディスクロージャー・プロが大切にしている考え方を紹介します。
開示品質を支える専門性
サステナビリティ開示では、情報を開示するだけでなく、その品質を確保することも重要です。
例えば、温室効果ガス排出量や人的資本に関する情報を開示していても、数値の根拠が不明確だったり、説明内容に一貫性がなかったりすれば、投資家は企業の状況を正しく理解することができません。
開示実務では、次のような視点が求められます。
- 情報の正確性
- 開示内容の一貫性
- 説明の分かりやすさ
- 財務情報との整合性
質の高い開示は、企業と投資家の信頼関係を支える重要な要素です。ディスクロージャー・プロでは、こうした開示品質の向上を支える専門性を大切にしています。
財務情報と非財務情報をつなぐ役割
サステナビリティ開示では、財務情報と非財務情報を関連付けて説明することが重要です。
例えば、人的資本への投資や気候変動への対応について説明する場合も、それが企業の成長戦略や将来の収益力にどのようにつながるのかを示さなければ、投資家にとって十分な情報とはいえません。
開示実務では、次のような情報を関連付けながら整理していきます。
- 経営戦略
- 財務計画
- サステナビリティ戦略
- リスクと機会
サステナビリティ開示の本質は、非財務情報を開示することではなく、企業価値とのつながりを分かりやすく伝えることにあります。
サステナビリティ開示時代に高まる開示人材の価値
サステナビリティ開示の拡大に伴い、開示実務を担う人材に求められる役割も変化しています。
これまでの開示実務では、財務情報を正確に開示することが中心でした。しかし今後は、サステナビリティ情報を含めて企業価値を説明する力も求められるようになります。
そのため、次のような経験や知識を持つ人材の重要性はさらに高まるでしょう。
- 会計・財務の知識
- 開示制度への理解
- 経理・開示業務の経験
- 監査法人での実務経験
サステナビリティ開示への対応が進むなかで、開示実務はますます専門性の高い領域になっています。
企業と投資家をつなぐ重要な役割を担う開示人材の価値は、今後さらに高まっていくと考えられるでしょう。
まとめ
サステナビリティ開示基準(SSBJ基準)は、日本企業のサステナビリティ情報開示に関する新たな基準として整備されました。今後は制度対応だけでなく、企業価値を適切に伝えるための重要な開示基準として、その存在感はさらに高まっています。
また、サステナビリティ開示の拡大に伴い、企業には非財務情報の収集・管理や財務情報との整合性確保など、これまで以上に高度な開示実務が求められます。開示の質が企業評価にも影響するなかで、開示業務を担う専門人材の役割はますます重要になるでしょう。
ディスクロージャー・プロでは、有価証券報告書や決算開示書類の作成支援を通じて、企業の開示品質向上を支援しています。サステナビリティ開示をはじめ、開示・決算分野の専門性を高めたい方は、ディスクロージャー・プロの採用情報もぜひご覧ください。









