会計士・経理のキャリアは東京だけじゃない。名古屋・東海エリアで働く選択肢

会計士や経理としてのキャリアは、東京でなければ積めないのだろうか。地方在住・地方出身で、会計や開示の仕事に関心がある人であれば、一度は考えたことがあるかもしれません。就職や転職のタイミングで「専門性を高めるなら東京」という話を耳にし、地元を離れることに迷いを感じた経験がある人も少なくないはずです。

公認会計士という資格は、実は驚くほど東京に集中しています。その一方で、名古屋を中心とする東海エリアにも、上場企業や公認会計士は一定数存在し、会計・開示の仕事はなくなりません。

本記事では、公開データから公認会計士・上場企業の地域分布を確認したうえで、名古屋・東海エリアで会計や経理のキャリアを考えることの意味について解説します。

公認会計士が東京に集中している理由

日本公認会計士協会は、全国を16の地域会に分けて活動しています。その中で最大の地域会が「東京会」で、管轄エリアは東京都を含む関東甲信越の1都6県(東京都・山梨県・長野県・新潟県・群馬県・栃木県・茨城県)です。東京会の年次報告書によれば、この1都6県だけで全国の公認会計士等の約6割にあたる、およそ2万7千人が所属しています。東京会はさらに東京23区や三多摩地区、周辺6県を合わせた30の地区会に細分化されており、それだけ組織として大きな規模を持っていることがうかがえます。

公認会計士の絶対数で見ても、都道府県別のデータでは大阪府が4,016人、神奈川県が1,796人、愛知県が1,775人と、1,000人を超える都道府県はごくわずかです。一方で、全体の約半数にあたる22県では会員数が100名以下にとどまっており、鳥取県ではわずか18人という数字も報告されています。公認会計士という資格そのものが、良くも悪くも大都市圏、とりわけ東京に強く偏った職業だということが、この分布からも読み取れます。この偏りの背景には、大手監査法人や上場企業の本社機能が東京に集中していることに加え、公認会計士試験の受験予備校や実務補習所へのアクセスのしやすさも影響していると考えられます。地方在住のまま会計士を目指す場合、こうした学習環境の違いも進路選択の一因になりがちです。

東海エリアの会計士・上場企業の実態

では、名古屋を中心とする東海エリアはどうでしょうか。日本公認会計士協会の地域会のうち、愛知県・岐阜県・三重県・静岡県を管轄するのが「東海会」で、本部は名古屋市に置かれています。所属している公認会計士等は2,409人で、 愛知県だけで1,775人の公認会計士等が登録されており、これは全国の都道府県の中でも上位に入る規模です。

上場企業の数にも目を向けてみましょう。名古屋証券取引所には、2026年9月10日時点で317社が上場しており、このうち単独上場(東京証券取引所などに重複上場していない企業)は60社にのぼります。名古屋証券取引所は、大阪や福岡、札幌の証券取引所と並ぶ「地方証券取引所」の一つでありながら、東証への上場一極集中が進む中でも、300社を超える規模を維持し続けている点が特徴です。名証プレミア・名証メイン・名証ネクストという独自の市場区分を持ち、地域に根ざした企業の資金調達の場として機能しています。

名証に上場する企業の本社所在地を都道府県別に見ると、愛知県が163社と最も多く、次いで岐阜県(18社)、三重県(14社)と続きます。東京都に本社を置く企業(69社)よりも、愛知県に本社を置く企業の方が多いという事実は、意外に感じる人も多いのではないでしょうか。中部地方全体(愛知・岐阜・三重・静岡・長野・石川・福井・富山・山梨)で見ると211社が集中しており、名証はその名の通り、中部・東海エリアの企業を主な基盤とする取引所だということが分かります。

項目 データ
東京会(関東甲信越1都6県)の会員数 全国の約6割(約2万7千人)
愛知県の公認会計士等の人数 1,775人(2025年12月時点)
名古屋証券取引所の上場企業数 317社(2026年9月10日時点)
名証上場企業のうち愛知県に本社を置く企業数 163社

なぜ地方にも会計・開示人材のニーズがあるのか

上場企業である限り、本社がどこにあっても開示義務からは逃れられません。名古屋証券取引所は、東京証券取引所への上場一極集中が進む中でも、単独上場企業を含めて300社を超える規模を維持し続けています。トヨタ自動車をはじめとする自動車関連産業の集積地である愛知県には、輸送用機器・自動車部品のメーカーや、それらを支える商社・金融機関など、ものづくりを支える中堅・大手企業が数多く本社を構えており、こうした企業もまた、有価証券報告書や決算短信といった法定開示書類の作成が毎年・毎四半期必要になります。製造業の比率が高い東海エリアでは、原価計算や在庫評価、研究開発費の会計処理など、業種特有の会計論点も多く、開示実務の専門性が生きる場面は決して少なくありません。

上場企業である以上、開示書類の作成は避けて通れない業務です。しかし、開示や連結決算の専門知識を持つ人材は、公認会計士の分布と同様に東京に偏りやすい傾向があります。地方の上場企業ほど、開示の専門知識を持つ人材の確保に苦労しやすい、という構造的な課題があるのです。実際、地方の上場企業の中には、開示書類の作成を専門の支援会社にアウトソーシングする例も増えており、属人化しがちな開示業務を仕組み化するニーズは、東京だけでなく全国的に高まっています。

名古屋で会計士・経理としてキャリアを積むという選択肢

名古屋・東海エリアでキャリアを考えることには、東京とは違ったメリットもあります。総務省の家計調査などでもたびたび指摘される通り、名古屋は東京と比較して住居費を中心とした生活コストが低く抑えられる傾向があり、可処分所得や住環境の面でゆとりを持ちやすいという声もよく聞かれます。通勤時間の短さや、休日に自然や実家にアクセスしやすいことも、働き方や暮らし方を考えるうえでの材料になります。また、地元を離れずに、あるいはUターン・Iターンというかたちで、実家や地元とのつながりを保ちながら働きたいと考える人にとって、東海エリアに上場企業や会計士のコミュニティが一定数存在すること自体が、キャリアの選択肢を広げる材料になります。

一方で、東京に比べれば絶対数の少ない東海エリアの会計士市場では、専門分野によっては経験者が限られ、キャリアの選択肢が狭まりやすいという側面もあります。特に、有価証券報告書の作成支援のような専門性の高い開示実務は、東京の専門特化した会社に経験・ノウハウが集積しやすいのが実情です。地方在住の会計士・経理担当者が「専門性を高めたい」と考えたとき、選択肢が東京の企業に偏りがちなのは、こうした構造が背景にあります。

開示という専門性は、勤務地を問わない

だからこそ注目したいのが、開示という専門性そのものは、特定の勤務地に縛られる仕事ではないという点です。有価証券報告書や決算短信の作成支援に必要な会計基準・開示制度の知識は、企業がどこに本社を置いていても共通して必要とされるものであり、東京で専門性を積んだ人材が、後にUターンして地方の企業を支援する、あるいは地方の企業を対象にした開示支援サービスに携わるといったキャリアの描き方も可能です。有価証券報告書のフォーマットや財務諸表等規則は全国どこの企業でも共通のルールに基づいており、名古屋の企業であっても東京の企業であっても、求められる専門知識そのものに違いはありません。

言い換えれば、開示の専門性は「持ち運びができる資格・スキル」に近い性質を持っています。最初にどこで専門性を積むかは重要な選択ですが、一度身につけた知識やノウハウは、その後どの地域で働くかを問わず活かし続けることができます。将来的に地元へのUターンを考えている人にとっても、まずは開示という専門性が集積している環境で経験を積んでおくことは、長い目で見た際の選択肢の広さにつながります。会計士試験や簿記の学習で培った知識も、こうした専門性の土台として着実に活きてきます。

ディスクロージャー・プロは東京を拠点に、プロネクサスグループの一員として全国の上場企業の開示実務を支援しています。名古屋・東海エリア出身の方にとっても、まずは開示の専門性を積み、将来的なキャリアの選択肢を広げるという考え方は、十分に検討に値するはずです。

まとめ

公認会計士の6割近くが東京圏に集中している一方で、名古屋を中心とする東海エリアにも2,400人を超える公認会計士と、300社を超える上場企業が存在します。地方にも会計・開示のニーズは確かに存在しており、その担い手となる専門人材は、決して東京だけで完結する話ではありません。

「会計士や経理として専門性を高めたいなら東京に出るしかない」という思い込みは、東京に人材や案件が集積しているという事実の裏返しではありますが、それがそのままキャリアの正解を意味するわけではありません。どこで専門性を積み、どこでその専門性を発揮するかは、分けて考えることができます。地元とのつながりを大切にしたい人にとっても、まず専門性が集積した環境に身を置き、そのうえで将来の選択肢を広げていくという考え方は、十分に現実的な進路の一つです。

ディスクロージャー・プロでは、有価証券報告書や決算短信などの開示支援を通じて、どこで積んでも通用する専門性を身につけることができます。地元とのつながりを大切にしながら会計・開示のキャリアを考えたい方も、ぜひ採用情報もご覧ください。

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